カップケーキの思い出

以前、雑誌等で発表した文章です。店のPRではなく、情報公開の一環です
 保育園に通っていた頃、毎日、カップケーキを食べているやつがいた。
 うらやましかった。あの、ひだひだの入った、半透明の紙(カステラにも使われているあの紙)でつつまれたカップケーキ。
 ぼくが一番うらやましかったのは、底の方のちょっと茶色になっているところ。
 甘そうに見えたのだ。
 そして、ふわふわした、空気をたくさんふくんだスポンジケーキの部分。
 友達は、いつも、しあわせそうに食べていた。毎日、毎日、よく飽きもせず食っていたと思う。(ぼくではない、友達が)
 ぼくのほうは、ときどき、アマショクを食っていた。甘食と書くのだろうか。あの、奥歯にへばりつく感触がなんともいやだったが、甘くて、ちょっぴり、焼けた味のするアマ食が好きだった。今考えてみると、単に、ねっとりとしたパンである。
 先日、アマ食を買ってきた。以前よりずっと小さい。子どもたちは「わーっ、UFOに似ている」とさわいでいたが、本物のUFOを見たこともないのになぜ、”似ている”などと証言できるのか。
 子供のころも、今も、ぼくは、アマ食はもっと、別のモノに似ていると思っている。あの感触といい、形といい、においといい。でも、ちょっと堅いかな。などと、はしゃぐ子どもたちをぼんやりと見ながら考えていた。
(1996.11.19)