以前、雑誌に連載していた文章です。店のPRではなく、情報公開の一環です 「起立!礼!さあ、じゃあ、いまから、算数のテストをかえすぞー」
チャット授業は先生の元気なメッセージ送信から始まった。チャットだからして、もちろん、だあれも起立なんぞしない。
「えーっ」
「うっそーっ」
「ゲゲ」
「マジ?>先生」
「(T_T)]」
その他、ショックを表すメッセージが延々と続く。あまりに多すぎるので中略。30人学級なのだ。この6年チャット組は。
「名前を呼んだら返事しろよ。青木」
「はーい>先生」
授業中のやりとりはチャットで行われる。一方、テストの返却はメールで行われる。テストの点数がバレるとまずいため、メールにはスクランブル処理がほどこされている。
「うわーっ、5点。超わっるーい」
「次ぎがんばれよ>青木」
「はあい(^^)>先生」
「おまえはいつもそうだよなー。返事だけはいい」
「なによー、加藤君たら」
「おまえらやめろよ。メッセージは必要最低限だけにしてくれよな。よけいなメッセージを長々と読まされる方の身にもなってみろよ」
「そうだよ、#%&”’&%&$%$」
「誰だ、文字化け知てるのは」
「俺がわるいんじゃないぜ、回線のせい$&%#’”」
「だkらあ、$%#$”%」
「清水だって文字化けしてるじゃないか」
「まあまあ、おまえら、もうやめろ。次、砂糖」
「砂糖だってよー」
「おー、わりいわりい。左党だっけな」
「佐藤だろうが」
「ちがうわ、佐東よ!>先生」
「ややこしい名前だな。佐東」
「す、すまん(^^);」
「その、絵文字使うのは止めようよ。いたずらにサーバーのトラフィックが増えるでしょうに」
「今週の金曜日にさあ、お前んちに行ってもいい?新しいミニ四駆見せてやるからさあ」
「加藤君たら、やあねえ(*^_^*)」
「おーい、だれだ?シークレットモードでナンパしてるやつは!」
「油断ならねえなあ>加藤」
「しまった、ばれたか。ついうっかり公開モードに戻しちまったぜ」
「まあ、いいじゃねえか。シグネチャー省略しているし」
「しっかし、女の子をミニ四駆でナンパできると思ってんのかよ!」
「シグネチャーがないおかげで、誰がメールしている変わからないんだけどね」
「話題も混乱してるしぃ。シグネチャーってサーバーのトラフィックの話でしょ?話題が混乱している」
「先生、あと5分で終わりですよ」
「メールは届くのが襲いからこまるよ」
「そうそう、チャットのメッセージが届いてからちょっと待たないと、テストのメールが返って来ないのよね」
「メールが瞬時に届くってウソよね」
「まるで国際電話だね。会話が遅れる」
「瞬時っていえば、佐東俊二はどうした?」
「先生、いたの?>先生」
「チャットって相手が見えないのが原則だからねえ。困るよ」
「くどいけどね、シグネチャーがないほうが、サーバーのトラフィックがね、軽いわけ」
「俊二はどこへ行った?」
「さっきから2つの話題が混乱してるなあ」
「あ、すいません、テレビ見てました。お昼の連ドラ」
「佐東君ったら、いま、授業ちゅうよ、。チャットの」
「m(_ _)m。。。」
「しかし、どうも、このチャットってやつはまだるっこしいな>シークレット」
「そうよね。みんなには内緒だけど、さっきから顔は見えているわけだし>同じくシークレット」
「これなら、直接話したほうがいいよなぁ>ALL」
「ウチの先生の新し物好きも困りモノよね」
6年チャット組の先進的ハイテク授業は、毎週水曜日の午後、都内某所の大型パソコン販売店のインターネット無料体験コーナーを早い者勝ちの手法で借り切って行われている。
(注:文中、漢字の間違いや、不自然な送りがなが散見されますが、それらは著者のオリジナル原稿に記されていたものです)
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